... 別冊よこぐも手帖 ...

  くらしの知恵と道具 jokogumo−よこぐも− 
りんごかごのはなし。

青森県弘前市はりんごの産地。りんごの収穫には地元で採れる丈夫な根曲り竹を使ったかごを使ってきました。根曲り竹細工の盛んな集落のほとんどのうちがりんごかごを作り、農家に納めていた全盛期とは打って変わり、今では副業を含める数件が残っているのみ。
「安いプラスチックのものが出てきてからは、みんな食って行けないから辞めてしまいましたよ。」
今でもご夫婦でりんごかごを作り続けるお宅を訪ねてきました。

「わぁ、青い竹のいい香りがしますね。」
さっそく感激する私に・・・

「え?竹の匂いする?」
なんと、もう何十年も竹まみれのご主人は竹の匂いが当たり前すぎて麻痺しているのだそうな。奥様にも「竹のいい匂いがするって」と笑っています。馴れってすごいんだ。

根曲り竹は東北などの寒い地方に自生する細い竹。雪の重さにも負けない丈夫さで、根に近い部分から「し」の字にその姿を曲げながらも上へ上へと成長することからこう呼ばれています。


「見ますか?これが材料です。」
上にかぶせられた布をバサッとめくると、そこには青々とした根曲り竹が積まれてありました。 
「本体になるところには丈夫な成長した竹を使って、縁や持ち手は曲げるから、まだ軟らかい1年目の若竹を使います。」

そういって束になっている中から抜いて見せてくれた若竹。春に生えてきたたけのこが成長し、竹になったものだけど・・・あれ?すでに根が曲がってるではないですか・・・。

「若竹ってことはまだ雪に倒されていないものですよね?何でもう曲がっているんですか?」
私は根曲り竹の名前の由来から、てっきり後天性のものだと思い込んでいたのでした。

「うん、まだ雪には埋もれていないけど、それはもう先祖代々記憶してるんでしょうね。最初から曲がってるんですよ。」 えー!これまで根曲り竹のものを扱ってきたのに、全然知りませんでした。DNAってすごい。すごすぎる。雪の重みに倒されて倒されて、それでも何とか伸びてきた竹の記憶。曲がって生えてきたほうが生き残っていけること、いったいどのくらいの時間をかけてものにしたんだろう。これには本当に驚きました。

そしてこれはその若竹を炙って曲げたもの。りんごかごなどの持ち手になります。

「前はね、この倉庫に入りきらないくらい作って、それをあちこちのりんご農家に送ったんだけどね。ここにも、ここの上にも積んで、それでもまだまだ溢れるくらいあったんですよ。」

「こっちにもたくさん積んで」
「ここにもたくさん」

どんなにたくさん作って、どんなにたくさんの農家に渡ったかをご主人はちょっと懐かしく、場所を移動するたびに教えてくれる。

りんごかごの需要は昔に比べて随分減ったけど、それでもまだまだ現役です。りんごを傷つけず、持ち手も丈夫。通気性もいいし、プラスチックのように紫外線で劣化することもありません。そんな現役の根曲り竹のりんごかご。



今はこのような姿になっています(笑)。
ブルーのテープ(荷物の梱包に使う)が巻かれているのは本来軟らかい若竹が使われるところ。

「若竹は材料が限られるし、巻くのも大変だから、今はもうお店で売るような工芸品にしか使わないんですよ(笑)。」

時間とコストをかけていてはやっぱり現実的ではないのです。時代に合った形と言えるかも。うちにひとつだけ手に入れる場合、ちょっとこの形は買いませんが、リアルりんごかごの姿としては何だか愛嬌すら感じてしまいました。

jokogumo用に仕入れたものは、「工芸品」仕様(笑)。ハイブリッドなリアルりんごかごは農家のみですのであしからず!
| 手仕事を訪ねる旅のはなし | 23:37






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