... 別冊よこぐも手帖 ...

  くらしの知恵と道具 jokogumo−よこぐも− 
山の人が作る道具
五十嵐二三夫さん、大正5年生まれの85歳。時間は短くなったものの、今も毎日山の素材を使って編み組み細工を作る。見よう見まねで始めてからもう40年以上。

山葡萄にくるみ、あけび、マタタビ。薪ストーブで暖められた小さな作業小屋には、道具に生まれ変わるのを待つたくさんの素材が吊るされています。それから、出来上がったカゴもあちこちに。
「出来た分を全部売ればいいんだけども、やっぱり全部なくなっちまうと寂しんだ。いくらかは自分の見えるところに取っといて、眺めるのがいいんだ。囲まれてねぇと落ちつかねぇな。」そういって五十嵐さんは自分の編んだカゴをじっと眺めます。


若かりし頃の五十嵐さんは猟師でもありました(現在は引退されているそう)。そしてそのときのことをとても懐かしそうに、また誇らしげに語ります。
「これは昔獲った熊のあごの骨。こんなの大切に取ってるもんはおらんだろうなぁ。」
「山で食べる弁当はうまいんだ。連れてった犬にもうまいもんやってな、一緒に食うのが最高なんだ。」
動物のこと、山の木々、その香り、空気を思い出しながら。
その様子を見ていると「囲まれてねぇと落ちつかねぇ」のにも納得。この人は、山の人なんだな。手仕事がすきだというのももちろんあるのだろうけど、きっとそれ以上に山が、それから山を感じることが出来るものすべてがすきなのだと思う。

「うまくはねぇが、それでもよかったら見て。あんたがどう思うか。」
そう手渡されたマタタビのザル。山の人が作る道具には毛羽が残り、形もいびつ。でも、次の瞬間「あっ」と思いました。
「これ、丈夫ですね。」
縁はしっかりと堅く、材料も厚い。
「見てくれは悪いけど、丈夫さには自信を持って作ってんだ。あとは値段だな。」山の話をするのと同じくらい誇らしげな五十嵐さん。見た目ではなく、こだわるのは丈夫さと買いやすい値段。

山形でカゴを作っているお友達が前に「今は商品として、工芸品としてカゴが作られているからすごく見た目もきれいだけど、本当に自分たちが暮らしの中に必要で作って使うものってもっと素朴でラフだったりするんだよね。でもちゃんと使いやすいよう、実用にこだわってる。私はそういうのだって素敵だと思うんだよ。」という話をしてくれたことがあるのを、このザルを見て思い出しました。
山の人、五十嵐さんのカゴやザル。いびつな形や毛羽立ちも何のその。山の材料を使った手仕事の原点がここにあったのでした。
| 手仕事を訪ねる旅のはなし | 22:25






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