... 別冊よこぐも手帖 ...

  くらしの知恵と道具 jokogumo−よこぐも− 
ホームスパンのこと 【3】工程編

少し前にホームスパンがどういうものか、その定義のようなものを簡単に紹介させていただいたのですが、せっかくなので今日はもう少し踏み込んでその工程について。

マフラーやストールなど、一枚の布になっていたらなかなか想像出来ない途中経過を写真とともにふむふむとご覧いただき、なんとなく「こういうものだったのか!」というのが伝わるとうれしいです。

では、いきます!

これが原毛。刈り取った羊の毛です。当たり前だけど羊はシャンプーなんてしないから、この時点ではかなりの汚れがあるのだそう。脂とかケモノっぽいにおいとか暮らしていた土地の土とか、いろんなものがついています(前に新藤さんが手に入れた、ナバホ族が育てている羊=ナバホチュロの毛は洗ったらアリゾナの赤土が出てきたのだとか)。

その原毛を洗ってきれいにします。汚れがひどい子(羊)の場合は水が泥水みたいに濁るのだそうです。何度も換えながらきれいにしていきます。人が手作業でやるのは大変だけど、やっぱりこう、がーっと機械でやってしまうのとは違った風合いが残されるのだと思います。

ホームスパンのマフラーを首に巻くとどこか「しっとり」した感じがするのですが、これも羊の脂を落としすぎない手作業のおかげなんじゃないかな。ちなみにこの羊の脂はラノリンといって、化粧品などにも使われるのだそう。どうりで!

脱水して、お天気のいい日に干します。ふぉわっふぉわになっているのが伝わってきて、なぜか「ふふふ」と笑いが込みあげてきそう。私だけ?疲れてる?

※染める場合はこのあとに染めます

そして今度はきれいになった羊毛をほぐし、繊維を整えていくカーディングという工程。ブラシのようなものを使い、手でやっていく方法もありますが、それなりの量をこなす必要のある作家さんなどは電動のものを使うことが多いようです。

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こんなふうに。色を混ぜて異なる色の糸を作りたい場合はこの段階で混ぜます。白い毛と黒っぽい毛を混ぜてグレーにしたり、染めた色同士を合わせて深みのある色にしたり。絵の具もそうだけど、微妙な色を作り出したいときは緊張しますね。慎重な作業なのだと思います。

ホームスパンのものを手にしたときにはちょっと注意して糸の中の色を見てみると面白いです。1色に見えても案外複雑に異なる色が組み合わさっているのですよ。


そうやって繊維を整えられた羊毛を少しずつ引き出しながら撚りをかけ、紡いでいきます。撚りの強さ、糸の太さ、その組み合わせによって風合いに違いが出て、それが織ったときの表情にもなります。

佐々木トモミさんに伺うと、織りあがったときの明確なイメージをもって紡ぐ場合もあれば、どんな糸にするのがこの毛にはぴったりか、素材と対話しながら決めていく場合もあるのだそうです。羊の毛も人間の髪の毛と同じで、それぞれに個性があるのですよね。それらをいかした糸作りです。

長い長い糸を静かに紡ぐってどんな感じなんだろう。途中で撚りや強さが変わってしまわないように、フラットな精神状態じゃないといけないんだろうなぁというのは想像できるけど、実際にそれが自分に出来るのだろうかと考えると、改めて、ホームスパンの尊さのようなものを感じます。

さて今度は紡いだ糸を織る工程、の下準備。写真はないのですが、機に糸をかけていきます。

どういったものをどういった織りで作るのか、仕上がりに対して忠実に(地道に)作業を行います。細い穴に糸を通したりもしつつ、すべての糸のテンション(張り具合)を同じに保たなくてはいけません。これまた気の遠くなる作業ですね...

そうしてようやく織り。誰もが何かで見たことがあるだろう織りの風景は全体の中でいうとかなりのクライマックスです。

どの工程が一番大変かを聞くと、おおむね「原毛を洗ってきれいにするところまでですかねぇ」なんて答え。細く紡いできれいに織って、大変!と素人は思いますが、そこに辿り着くまでが一苦労なのでした。


機織といえばこう、シャトルをしゅっと向こう側に渡してバンバンッとそれを押さえていくイメージだけど、ホームスパンの場合はこの「バンバンッ」はなくて、もっと静かに進めます。ふんわりを空気を含み、やわらかく肌に沿うように、でもしっかりと。(※服地などはもう少しきつく織るそうです。用途に応じて加減します。)

大判で、しかも無地のものだとどうしても途中で集中力が切れそうになると聞きました。景色に変化のない高速道路の運転も長時間になると結構つらいですもんね。←こんな例えですいません

そんなこんなのハードルを乗り越えて...

完成!

と思いきや、まだあります。

織りあがった生地をお湯で洗ってフェルト化させる「縮絨(しゅくじゅう)」という作業。これによりそれぞれの糸がしっかりと絡み合いひとつの布として動かなくなります。

そうして乾かしたものにアイロンをかけ、形を整えて今度こそ完成!

パチパチパチ(涙)長かったー!

新藤さんのコースターやポットマットのような小物はここからまた生地をカットして縫製して...と続きますが、大体このような流れです。

ふぅ!

それぞれの工程に知識と経験と勘とそれから感性が混ざり合って、それぞれの作品は出来上がります。ものづくりすべてのことに言えるけど、こうして改めてそれらがどのようにして出来ているのかを考えると(知ると)まずは感謝、しかないですね。

こういうものが国内で作られていて、身近なものとして身につけることができるって素晴らしいことだなぁと思います。作り続ける人がいて、それを支える人(ものづくりのための素材や道具を作る人なども)、その仕事を理解し求める人がいてこそ。どこが欠けても成り立たちません。

見え方や見るところもまた違ってきて楽しいはず。18日(金)からの冬支度展ではいろいろなものを手にとって、身につけてご覧いただけます。よい機会なので是非!

思いのほか長くなってしまいました。みなさまお付き合いありがとうございました!

(※作業工程の写真は佐々木トモミさん、新藤佳子さんよりお借りいたしました。ありがとうございます)

| 冬支度展2016 | 14:19






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